SIDEWAY
寄り道のススメ

「ゲストハウス」

SIDEWAY – 寄り道のススメ
「ゲストハウス」

SIDEWAY – 寄り道のススメ

「ゲストハウス」

三上勝久が初めて体験したゲストハウスは、ポルトガル・リスボンにある宿でした。 その素晴らしさに心打たれ、以降国内外の50近いゲストハウスを体験することに。 今回は、そうして感じた、ゲストハウスというジャンルの宿の魅力と使い方をご紹介します。

ー バイクで世界中を旅してきた三上勝久が、これまでの旅を振り返り、現地の食事やカルチャー、そして忘れ難き思い出を語る、SIDEWAY。

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「ゲストハウス」

  バックパッカーにはおなじみのゲストハウス。ひとくちにゲストハウスと言ってもさまざまな違いがあるけれども、共通しているのは「相部屋」で、非常に安価だと言うこと。ほとんどのゲストハウスは、ドミトリーと呼ばれるベッド、あるいはひとり区画に仕切ったスペースが与えられるのみである。もっとも、プライバシーを求める客のために個室を用意しているところも少なくはないが。

  こう聞くと、ただ安いだけの宿と思ってしまう人もいると思う。僕も初めて泊まるときには、20代のときに止まったユースホステルのような面倒臭さがあるんじゃないかと思っていた。

  だが、そんなことはなかった。じつはゲストハウスの楽しみは、同じタイミングで宿泊したほかの客との交流にあったのだ。多くのゲストハウスが共用のラウンジやバー、カフェを併設していることが多く、ここで居合わせたゲスト同士で楽しい交流や旅の情報交換が始まることが多く、一気にその世界に引き込まれてしまった。

  もちろん相性はあるけれども、気の合う相手と出会え、楽しい話ができたときはとても充実した時間を過ごせる。宿の近所の飲食店や観光地の話、宿に至る前に寄った場所や宿の話、おすすめの場所や道の話などの有用な情報も多い。

  また、この会話に加わってくれるホストや地元の人と出会うことも多く、彼らは地元ならではの情報を教えてくれる。連泊した時などは、宿で出会った仲間と連れ立って出かけることもある。

  ビジネスホテルにしろ、リゾートホテルにしろ、旅館にしろ、一般的な宿では、チェックイン後に他の人に会ったり話したりすることはあまりない。カップルで旅行しているときには、プライバシーが保たれてその方がいいだろう。でも、ひとり旅ならゲストハウスに泊まるのが、僕は好きだ。


  ゲストハウスを探すには、いくつか方法があるけれども、僕がよく使用しているアプリはトリップアドバイザーとGoogleマップだ。国内大手のホテル手配サイトだと、標準の検索で出てこないことも多いからだ。ブッキングドットコム、ホテルズドットコムなどもゲストハウスの掲載情報が多い。

  Googleマップの場合は、泊まる予定地域を表示してゲストハウスで検索すると見つけやすい。表示されたリンクからwebサイトをみたり、予約サイトなどを見て検討する、という感じだ。

  まれに、ゲストハウスという名前がついていても、貸しペンションなどの場合もあるし、期間限定でしか営業していないところもあるので注意したい。多くのゲストハウスは、由来とテーマを説明しているwebサイトを持っていることが多いので、僕は初めて泊まるときにはwebをチェックしてから予約するようにしている。

  1泊の料金はさまざまで、ドミトリー1泊1500円くらいからあるが、一般的には3000円〜5000円、といったところ。これに加えて、8000円くらいから1万円以上で、複数人が泊まれる個室を用意しているところも多い。

  ドミトリーは、部屋に複数の2段ベッドが複数置かれているところが多いけれども、なかには広い和室を衝立で仕切っただけのところもある。2段ベッドの場合は、カーテンがついていることが多く、ある程度のプライバシーは保てるようになっていることが多い。カプセルホテル的な感じと思っていただいて間違いない。シーツは自分で敷くように渡されることもあるし、敷いてあるところもある。ただし、どちらもチェックアウト時に剥がして所定の場所に入れるように指示されることが多い。

  トイレは当然共用で用意されているが、風呂に関してはさまざまだが、共用のシャワーだけが用意されているところが多い。とくに温泉地が多い宿の場合は、チェックイン時におすすめの温泉などを教えてもらえることが多い。

  チェックイン時刻は午後3〜9時くらいが多い。チェックアウトは、11時くらいが一般的だ。宿によっては、夜間など一定時間無人になる宿もあるのでチェックイン時刻には注意が必要だ。

  スタッフのいない時間の出入りはと言うと、多くの宿で暗証番号式のオートロックを採用していることが多く、暗証番号を聞いておくことで出入りできる。


  ゲストハウスの多くは、共用のキッチンが用意されていることが多い。冷蔵庫やシンク、コンロや電子レンジなどが使え、調理道具、食器も用意されているのが一般的だ。

  なので食材を買ってきて自分で調理することもできるし、材料を冷蔵庫や冷凍庫で保管することもできる。もっともその場合、容器や袋に日付と名前を書かないといけないけれども。

  僕は何度か、友人たちと連れ立ってゲストハウスに泊まり、そこでみんなで夕食を作って楽しんだことがある。近くの飲食店に出かけるのもいいけれども、仲間でわいわい料理しながら楽しむのもとても素敵だ。その時は、宿についてから近くのスーパーマーケットに出かけて食材を調達した。自分の地元とはまた異なる食材が売っていたりして、これはこれで楽しい。

  宿によっては、バーベキュー道具や食材まで用意されていることもあるので、そうしたメニューを使用するのもいい。

  僕がよく泊まるゲストハウスにはバーも併設されていて、夕方から夜まではそこで酒などを楽しむことができる。ゲストハウスによっては、バーやカフェを一般客に開放しているところも多く、そうしたところでは地元の人とときに交流が生まれることもある。もちろん、地元の食材を生かしたオリジナルメニューを楽しめる宿も少なくない。


  これらのゲストハウスの特徴は、日本だけでなく海外でもおおよそ同じだ。価格は国によって異なるが、ホテルなどに比べて安く泊まれることは間違いない。なので、日本で一度体験すると、海外で安い宿に泊まりたい、なんてときにも役立つはずだ。僕もモンゴルやアメリカで相当助けられた。

  僕の場合、ゲストハウスに泊まるようになって、旅の楽しみが大きく広がった。以前は宿に泊まる場合はビジネスホテルに泊まることが多かったのだが、今ではゲストハウスを優先するようになった。

  以前はギリギリになってチェックインし、風呂に入って寝るだけだったのだが、今では早めにチェックインして、ゲストハウスと、ゲストハウスのある街を散策するのが楽しみになっている。

  繰り返し訪ねているゲストハウスでは、スタッフの友人も多くできたし、近隣の飲食店とも顔馴染みになった。今では第2の故郷のように感じるほど。ただ眠る、休むだけではない素晴らしい体験が得られたからだ。


  ゲストハウスごとに個性はさまざまだけれども、多くのゲストハウスのホストの多くが、地域活性化や古民家の利用促進、地域への定住促進などをテーマとして活動している若者が多いことも魅力だ。いかに社会をよくしたいか、と考えている人々との会話はじつに刺激になる。

  古民家や、古いビルをリノベーションした物件も多く、それらの工夫をみていても楽しいし、若くセンスのよいデザインが溢れている宿も多い。

  だから、ただ泊まるだけでも新しい発見があるし、宿がある街をある程度理解することができる。もし、まだゲストハウスに泊まったことがない、という人はぜひ体験してみてほしいと、心から思っている。

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