TSUNAGU-MONSTER
OUTDOOR MONSTER Lock × リバーズ コラボインタビュー

TSUNAGU-MONSTER

OUTDOOR MONSTER Lock × リバーズ コラボインタビュー

リバーズの熱望により実現した「アウトドアモンスター」とのコラボレーション。人と自然を見えない“モンスター”がつないでいる。その遊び心あふれるコンセプトに魅了され、生みの親であるLock氏に「アウトドアコーヒーのモンスターを描いてほしい」と依頼。その“リバーズモンスター”初披露の場で、Lock氏がモンスターたちに込める特別な想いまでうかがった。

SHINKIRO-TSUNAGI

蜃気楼、つなぎ。

アウトドアモンスターの生みの親Lock氏との打ち合わせの場にて、初めて目の当たりにしたリバーズをイメージしたモンスターは、そう名づけられていた。

SHINKIRO-TSUNAGI

悠々と流れる川を前に、淹れたてのコーヒーを飲むモンスターは、どこか少年のような風貌。

「キャンプ場などで、朝に飲むコーヒーって、ワクワクする記憶と結びついてることが多いじゃないですか。この子もそう。朝焼けを見ながら、今日これからどんな楽しいことが待ってるのかなって期待に胸膨らませている。無意識に足をバタバタさせちゃってるのもそのせい笑。こどもってよくこうしてるでしょ」

ワクワクする一日、それを“私たち”に思い出させるのが彼の役目だという。

「仕事とか忙しいときに、朝コーヒーを淹れていて、ふと『最近キャンプ行ってないな…』とか思い出すじゃないですか。それをコーヒーの湯気を通して、蜃気楼のように(楽しかった情景を)見せているのが、この子、ってイメージです」

SHINKIRO-TSUNAGIを描いた限定アイテムは「ウォールマグスリークODM」「スタウトエア550/1000 ODM」「ODMステッカーSHINKIRO-TSUNAGI」(耐水・耐候仕様)のアウトドアでも活躍する4つ。


アウトドアモンスターの役目は、人と自然を、つなぐこと。

あなたが日常に物足りなさを感じたとき、彼らはどこからともなく現れる

―――と言われている。

人の数だけいるモンスター

アウトドアモンスターとは一体、何者なのか?

「人をアウトドアに引き込んでいるのが、見えないモンスターたちなんです。そんな存在がいたらいいなって」

そう考えるきっかけは、Lock氏が20代のころより続けている「山」にあった。

山好きの原点は、20代半ばのときに訪れた、鹿児島県・屋久島。人生の道に迷っていたタイミングに、古来より変わらない島の山々を登り、その背中を押してもらった。以来、迷うときにはいまも山にアイデアをもとめたりしている。

「登山って、登っている最中は、ほぼ“しんどい”としか思っていなくて。『なんで登りに来たんだ』『もう登りたくないよ』とかばっかり考えてるんですけど。それが、登頂して、下山しているころには、『次、どこの山行こうかな』とか考えている笑。これってなんでなんだ?って思って。きっと、人間の意識をそう思うように仕向ける“モンスター”がいるんじゃないか、って思ったのがきっかけです」

そう考えたほうが、世界は楽しい、とも思った。

「そこから、自然との向き合い方も、人の数だけあるだろうなって気づいて。山を登りたい人、湖で釣りしたい人、ただ自然のなかに居たい人。その人の数だけモンスターもいるはずだって考えたら、どんどん増えていって」

日本古来の八百万の神々のように、人の想像の数だけ増えていくモンスターたち。その一体一体にLock氏は名前とオリジナルのストーリーも加えた。

前段で紹介したリバーズのモンスターSHINKIRO-TSUNAGIのストーリーはこちら



その世界観に、徐々にファンが広がっていく。

自然のなかで目にしていた何気ない出来事が、目に見えないモンスターの仕業だったかもしれない。そんな遊び心に多くのアウトドアファンと、ブランドも反応した。うちのモンスターもつくってほしい、とコラボのオファーが殺到する。現在までに生み出したモンスターは200体を超えている。

コラボによって生まれる限定グッズも、ファンのコレクター魂に火をつけている。今回、大人気のモフモフワッペンも、リバーズらしいコーヒー豆の迷彩柄「MAMEISAI」として、オンラインストア限定で販売される。

そんなモンスターたちには、ある共通の願いが込められているという。

モンスターに込められた願い

2011年3月、地元、宮城県仙台市でLock氏は東日本大震災を経験する。

デザイナーとしての柱を模索していた時期に、予告なく到来した未曾有の災害。

住んでいた街は、一日にして、その機能を喪失した。

「ライフラインって言葉がありますけど、まさにその通りだなって思ったのを覚えていて。そのすべてが止まってしまったら、人間って何もできないんですよね」

元・街だった場所を歩くと、当面の食べ物も手に入らず、打ちひしがれる人々を目の当たりにした。

ふと、空を見上げると、地震前と変わらずに空を舞う鳥たちの姿。

彼らは自然のなかで変わらずに生活を続けている。

もしかしたら、人間だけが自然と向き合わずに生活をしていたのではないか。

追い打ちをかけるように報じられる原発のニュース。

「いつのまにか、自然をコントロールしているつもりになってたんじゃないかなって思って。僕が住んでいた町も、本当は自然のなかのただの一角で。人間も自然のなかで“仮住まい”していただけなのに、そのことを忘れちゃっていたんじゃないかって」


だとしたら、生かされた自分がすべきことは何か。

もう一度、人を、正しく自然に向き合わせるような、何かをつくりたい。

それがものをつくりだすことができるデザイナー、自分にできることなのではないかと。


街々は徐々に復旧していく。

震災から2度目の春を迎える少し前、その「何か」が、最初のアウトドアモンスター「TREE MAN」としてLock氏のブログにて発表される。

新緑から紅葉まで色目を使い僕たちを登山へと引き込もうとするモンスターです。山以外にもぽつらぽつらと街中にも生息していますので彼の誘惑にご注意下さい!(2012年2月20日のブログより)

恩送り

人を自然と向き合わせること、そしてもうひとつ、アウトドアモンスターには託されている思いがある。

「震災以降、人の自然観が変わればいいなって考えるようになったんですけど、反対にいつまでも“変わらないでほしい”と思ったのが、『やさしさ』だったんです」

震災の直後から街の復旧のために尽力した人たちがいた。その恩は一生忘れられないとLock氏はいう。ただ、その方たちに直接、恩を返すことはできない。生かされた自分も「何かしたい」という思いが募っていくなか、出会ったのが「恩送り」という言葉だった。

「直接、恩を返すことに代えて、違う誰かに『やさしさ』や『助け』を届ける。リレーのように『やさしさ』をバトンでつないで、世界全体を変えていくという考え方なんですけど。いつの日かその『やさしさ』がその人たちにも届いてくれたらいいなとも思って」

この恩送りに光明を見つけたLock氏は、デザイナーとして自分ができることを考える。そして、恩送りを広めるデザインのステッカーを自費で制作すると、それをより多くの人に届けるべく、地元のラジオ局に連絡し、番組内で取り上げてくれないかとお願いした。

「大変な時期に、いきなりのお願いだったので、難しいだろうなとは思ってたんですけど」

ところが、その想いに共感したラジオ局は、ふたつ返事で協力することに。

震災後にLock氏が、「恩送り」を広めようと制作したデザイン。

「ようやく自分が貢献できることを見つけたうれしさもありましたけど、何よりこのときの人の『やさしさ』に感動しちゃって」

この自分の思いをつないでくれた「やさしさ」こそが、あらゆるものを「つなぐ」ことに欠かせないものだと、このとき気づいた。


そしていまも、モンスターを生み続ける最終目標としてLock氏のなかに残っている。

「僕の最後の夢って、見知らぬこどもが『モンスターが悲しむから』といって、誰かのゴミを拾っているところを見かけることなんです」

見えないモンスターは存在し、やさしさを生み出して、自然や人と人との心をつなげている。

そんな未来を見たくてLock氏は今日もモンスターを描き続けている。

Lock(ろっく) 1981年宮城県出身。2011年にデザインユニットLockを立ち上げる。地元仙台市にて東日本大震災に罹災した体験から、人と自然を結びつけるアウトドアモンスターを創作。その世界観に共感した多くのファンとコラボブランドを生んでいる。アーティスト名のLockは、デザインで人と人をつなげたい(Lockしたい)という願いをもとに命名。

にしむら 西村

RIVERS INTERVEIW